FOR CORPORATE
健康経営は何から始めればいい?
最初の4ステップと、
鍼灸を取り入れるときに考えたいこと

「健康経営に取り組みたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」
ご相談をいただくとき、最も多いのがこの一言です。
順を追って説明します。後半では、施策として鍼灸を検討される際に整理しておきたい視点についても触れます。
そもそも健康経営とは
従業員の健康管理を「コスト」ではなく「投資」と捉え、経営的な視点で戦略的に取り組むことをいいます。
経済産業省は、この取り組みを実践している企業が社会的に評価される環境を整えるため、健康経営優良法人認定制度を設けています。認定は企業規模別に「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」に分かれ、日本健康会議が認定しています。
2026年時点で、中小規模法人部門の認定法人は2万社を超えました。
最初の4ステップ
ステップ1 保険者の「健康宣言」に参加する
ここが実質的なスタートラインです。
健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定を申請するには、加入している保険者(全国健康保険協会=協会けんぽ、または健康保険組合)が実施する健康宣言事業への参加が原則として必須とされています。
この順序を知らずに、先に社内で施策を始めてしまい、申請の段階で気づく企業が少なくありません。
なお、東京都に所在し協会けんぽ東京支部に加入している場合は、「健康企業宣言東京推進協議会」による銀の認定取得が申請の要件となります。宣言を出してから6か月以上取り組み、実施結果を報告して認定を受ける流れです。逆算すると、宣言だけで半年以上かかります。
まずは、自社が加入している保険者に問い合わせてください。ここが最初の一歩です。
ステップ2 健康づくり担当者を決める
認定要件では、健康づくり担当者の設置が必須項目に含まれています。
専任である必要はありません。総務や人事の方が兼任されるのが一般的です。ただし「誰が担当か決まっていない」状態だと、要件を満たしません。
この段階で、経営者の関与も明確にしておいてください。 認定要件には「健康宣言の社内外への発信」と「経営者自身の健康診断の受診」も含まれています。社長が自分の健診を受けていない、というだけで足元が崩れます。
ステップ3 自社の健康課題を把握する
何が課題かを決めずに施策を選ぶと、単発のイベントで終わります。
認定申請書では、健康経営の推進計画において課題テーマを選ぶ欄があります。用意されている選択肢には、たとえば次のようなものがあります。
- 従業員の生産性低下防止・事故発生予防(肩こり、腰痛等筋骨格系の症状や、睡眠不足の改善、転倒予防)
- 生活習慣病の予防・重症化予防
- メンタルヘルス不調への対応
注目していただきたいのは1つ目です。 肩こり・腰痛といった筋骨格系の症状は、制度が公式に想定している課題テーマです。立ち作業、重量物の運搬、長時間のデスクワークや運転が中心の職場では、最も自然に選べるテーマといえます。
課題を決める材料は、健康診断の結果、休職・欠勤の状況、そして従業員へのアンケートです。難しく考えず、「最近、身体で困っていることはありますか」と聞くだけでも十分な出発点になります。
ステップ4 課題に合った施策を、無理のない形で始める
ここで初めて、具体的な施策の話になります。
認定要件は、必須項目と17の選択項目で構成されています。選択項目は3つのブロックに分かれ、ブロックごとに必要な充足数が定められています。
| ブロック | 評価項目 | 必要な充足数 |
|---|---|---|
| (1)従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討 | ①~③ | 2項目以上 |
| (2)健康経営の実践に向けた土台づくり | ④~⑩ | 2項目以上 |
| (3)従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策 | ⑪~⑰ | 4項目以上 |
(3)だけ必要数が倍である点に注意してください。7項目中4項目です。ここが最も埋まりにくいブロックになります。
なお上位認定(ブライト500・ネクストブライト1000)を目指す場合は、①~⑰のうち16項目以上の充足が求められます。
申請までのスケジュール感
| 項目 | 時期 |
|---|---|
| 保険者の健康宣言への参加 | 申請の半年以上前 |
| 中小規模法人部門 認定申請 | 例年8月中旬~10月中旬(2027年版は2026年10月16日17時締切) |
| 選定・認定時期 | 翌年3月頃 |
| 認定申請料 | 16,500円(税込・中小規模法人部門) |
申請書には前年度からの取り組みを記載します。 つまり、今から始める施策が反映されるのは翌年の申請です。「今年の申請に間に合わせたい」という段階では、すでに準備期間が足りていないことがほとんどです。
秋に始めて翌夏までに実施しきる、というサイクルが最も無理がありません。
よくあるつまずき、3つ
つまずき1 記録が残っていない
申請の段階で最も困るのが、これです。
取り組みを実施していても、実施日・参加人数・内容の記録がなければ、申請書は書けません。「去年やったはずだけど、いつ誰が参加したか分からない」という状態は、実際によく起こります。
年度の初めに記録シートを1枚用意し、実施のたびに埋める。 これだけで、申請作業の負担はまったく違うものになります。
つまずき2 単発で終わってしまう
セミナーを一度実施して終わり、というケースです。
とくに注意が必要なのが「⑬運動機会の増進に向けた取り組み」です。この項目は継続的に実施していることを前提としており、一度きりのイベントでは要件を満たしません。
また、有志の集まりや、経営者が個人的に続けている習慣も対象外です。会社の施策として実施されている必要があります。
つまずき3 担当者や施術者が替わると止まる
運用のなかで、人は必ず替わります。担当者の異動、外部パートナーの交代。
そのたびに一から立て直すのではなく、途切れずに引き継げる形になっているかどうか。 ここが、続けられる健康経営と、一度きりで終わる取り組みとの分かれ道になります。
引き継ぎに必要なのは、実施内容の記録、使用した資料、そして「なぜこの施策を選んだか」という判断の記録です。人ではなく、仕組みに残しておいてください。
施策として鍼灸を
検討される場合
働く人の身体に向き合う取り組みとして、鍼灸師の専門性は健康経営と相性のよい選択肢です。ただ、導入を検討される際に、あらかじめ整理しておいていただきたいことがあります。
1 信頼できる質が担保されているか
ここが、取り組み全体の印象と価値を大きく左右します。
はり師・きゅう師は国家資格です。しかし、資格があることと、企業の現場で成果を出せることは別の話です。確認しておきたいのは次の点です。
- 国家資格の保有(はり師・きゅう師)
- 専門分野と、これまでの経験
- 企業での対応経験の有無
- 参加者に分かりやすく説明する力
- 職場のルール(安全衛生、機密保持)を理解して動けるか
最後の2つは見落とされがちですが、実際の現場ではここが最も差になります。施術ができることと、人前で説明できることは、まったく別の能力です。
2 施術だけでなく、
「持ち帰れるもの」まで考える
その場の施術に加えて、社員が自分で続けられるセルフケアや、季節の養生の視点まで持ち帰れると、健康づくりは日常へと広がっていきます。
専門家が関わる価値は、施術の時間そのものだけでなく、むしろこの「専門知を、日常で実践できる形に翻訳して手渡す」部分にあります。
認定要件との関係でも、この視点は重要です。実は、出張施術そのものは認定要件のいずれの項目にも直接該当しません。 一方で、セルフケアの指導(教育機会)や、職場で継続的に体を動かす時間の設計(運動機会)は、明確に該当する取り組みです。
福利厚生としての施術の価値を否定するものではありません。ただし「認定要件を満たしたい」という目的であれば、施術だけでは足りないということは、最初に知っておいてください。
3 続く仕組みを、最初に用意しておく
前述のとおり、⑬は継続性を問う項目です。
「毎日必ず」と決めると、繁忙期に一度飛んだ時点で終わります。やれる日にやる、週◯回以上を目安に、くらいの設計のほうが1年後に残ります。
そして、導入から2〜3か月目が最も崩れやすい時期です。ここで一度、外部の目が入って調整できるかどうかで、定着率が変わります。
Acu Castにできること
Acu Castは、健康経営に鍼灸を取り入れたい企業と、信頼できる鍼灸師をつなぎます。
目的の整理から、続いていく設計、質の見極め、そして担当が替わっても途切れない運用まで、まとめてお預かりします。
私たちがご提案の際に大切にしているのは、認定要件の言葉でお話しすることです。 「健康にいいことをしましょう」ではなく、「この取り組みは申請書のどの設問に該当します」という形でお伝えします。担当者の方が申請書を書く際に、そのまま照合できる状態でお渡しします。
実施記録も、記入した状態でお渡ししています。申請時に一番面倒なのが、そこだからです。
「まず、何から考えればいいのか」——その段階からのご相談で大丈夫です。 どうぞお気軽にお声がけください。
よくあるご質問
Q. 健康経営は何から始めればいいですか。
加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合)の健康宣言事業に参加することです。健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定申請には、原則としてこの参加が必須とされています。東京都で協会けんぽ東京支部に加入している場合は、「健康企業宣言」の銀の認定取得が申請要件となり、宣言から認定まで半年以上かかります。
Q. 従業員が10名程度の会社でも取り組めますか。
取り組めます。中小規模法人部門は、業種によって定義が異なりますが、おおむね従業員数が少ない法人が対象です。むしろ少人数のほうが全員に同じ取り組みを届けやすく、参加率も安定します。
Q. 費用はどれくらいかかりますか。
認定申請料は中小規模法人部門で16,500円(税込)です。これに加えて、実施する施策の費用がかかります。既存の朝礼を活用するなど、大きな費用をかけずに始められる取り組みもあります。
Q. 出張施術(鍼灸)は認定要件に含まれますか。
出張施術そのものは、認定要件のいずれの項目にも直接該当しません。福利厚生としての価値とは別の話としてご理解ください。一方で、セルフケアの指導(④教育機会の設定)や、職場で継続的に体を動かす時間の設計(⑬運動機会の増進)は、該当する取り組みとして整理できます。
Q. セミナーを実施すれば「運動機会の増進」の要件を満たせますか。
満たせません。認定申請書のQ26には「教育・研修や保健指導、情報提供(ポスター掲示等)は除きます」と明記されています。セミナーは④(教育機会の設定)で評価されます。⑬を満たすには、職場で集団で運動を行う時間を設ける、運動機能チェックを定期的に提供する、個別の運動メニューを作成する、動画等のツールを提供する、といった取り組みが必要です。
Q. 認定は必ず取得できますか。
認定の可否は、必須項目と選択項目の総合判定によります。外部の支援事業者が関与できるのはその一部であり、認定を保証できるものではありません。「認定を保証します」と説明する事業者には、ご注意ください。
出典
※本記事は2026年8月時点で公開されている資料に基づいています。申請要件は年度ごとに改定されますので、最終的な内容は認定事務局が公表する最新の資料をご確認ください。
※「健康経営®」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
