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施術以外の収益源としての
「セミナー講師」

鍼灸師向け
企業向けセミナーで話す鍼灸師のイメージ

鍼灸師の収入は、施術時間に比例します。一人に一時間かければ、一時間分の売上にしかならない。これは施術という仕事の構造上、どうしても避けにくい前提でした。

ところが、企業から鍼灸師に届く依頼には、施術ではなく話すことを求めるものがあります。社員向けのセミナー、研修、健康講話。呼び方はさまざまですが、要するに講師です。

一対多で、時間あたりの報酬の考え方が異なり、施術のように身体を使い続けない。セミナー講師は、施術とは別の仕事です。

なぜ企業がセミナーを求めるのか

背景の一つに健康経営®があります。健康経営優良法人の認定制度では、企業が従業員の健康に対してどのような取り組みを行い、その記録を残したかが評価されます。

施術は受けた本人には価値がありますが、社内施策の記録として整理しにくい面があります。一方、セミナーは実施日・テーマ・参加人数・アンケート結果が、そのまま資料になります。企業担当者にとって運用しやすい施策なのです。

担当者には社内で説明すべき目的があり、講師はその目的を達成するために招かれます。ここを理解しているかどうかで、提案の質が変わります。

施術との違い

報酬の考え方

セミナーの報酬は、固定の講師費用として設定されるのが一般的です。企業の予算は年度単位で組まれ、実施前に金額が確定していなければ稟議を進めにくいためです。

見積もりでは、講演時間だけでなく、資料作成、事前打ち合わせ、移動、実施後の簡単な報告までを含めて考えます。初回は資料をゼロから作るため準備時間がかかりますが、二回目以降は内容を更新しながら再利用できます。

施術は毎回、目の前の一人に向き合います。セミナーは、一度つくった構成や資料が自分の資産として積み上がります。

求められる能力

求められるのは施術技術そのものではなく、構成力と説明力です。健康に関心のある人と、業務として参加している人が同じ部屋にいることを想定し、関心の薄い人にも届く設計が必要です。

何を話すか

企業向けセミナーでは、次のようなテーマを知識の紹介として構成できます。

  • 東洋医学の基本的な考え方(自然観、季節と身体の捉え方)
  • 経穴という概念と、その背景にある考え方
  • 二十四節気に沿った生活の組み立て方
  • 食材を性質で捉える薬膳の考え方
  • デスクワーク中心の働き方と姿勢についての考え方

企業向けセミナーは「知ってもらう場」であり、個別に診断したり、治療効果を約束したりする場ではありません。

表現するときに越えてはいけない線

効果効能の断定は避けます。特定の症状が治る、改善すると約束する表現は、広告として法令上の問題になり得ます。社内配布資料に残る場合は、特に注意が必要です。

診断的な表現も避けます。参加者を見て医学的な診断をすることは鍼灸師の役割ではありません。医療的な判断が必要な相談には、医療機関への相談をご案内します。

医薬品的な表現にも注意します。食材や生活習慣を紹介するときも、「効く」「予防する」といった断定は避けます。

代わりに「東洋医学ではこう考えます」「このような捉え方があります」「古典にはこのように記されています」と、主語を学問体系の紹介へ移します。この線を守れる講師は、企業にとって安心できる発注先です。

60分セミナーの基本構成

時間内容
冒頭 5分自己紹介と、今日の話が参加者にとって何なのかを提示する
前半 20分東洋医学の考え方を、専門用語を日常の言葉へ置き換えて紹介する
後半 25分座ったままできる動きなどを、参加者と一緒に行う
最後 10分質疑と、持ち帰ってほしいことを一つに絞って伝える

よくある失敗

施術の宣伝になってしまう

最後に自院の案内を強く出すと、担当者の信頼を損なうことがあります。企業は宣伝の場を提供したわけではありません。セミナーそのものの価値を届けることが、次の依頼につながります。

専門用語が多すぎる

長年使ってきた言葉も、初めて聞く人には外国語と同じです。原稿を作ったら、鍼灸を知らない人に読んでもらうことをおすすめします。

参加者が動かない

オフィスの会議室では、最初に動く人が出にくいものです。まず講師が実演し、その後に参加者へ促すこと。立たない、目を閉じない、声を出さないなど、心理的な負担を下げる設計も大切です。

時間が足りなくなる

話したい内容をすべて入れると、時間を超えます。企業のセミナーは次の予定が決まっているため、準備段階で内容を三割ほど削るくらいがちょうどよいこともあります。

最初の一件をどうつくるか

  • 既存の患者さんの勤務先勤務先で健康に関する講話の機会がないか、自然な範囲で聞いてみる。
  • 商工会議所や業界団体会員向けセミナーなどの機会があるかを確認する。
  • 知人経由の中小企業外部専門家との接点が少ない企業へ、具体的なテーマを添えて提案する。
  • マッチングを行う事業者へ登録する企業側の要件整理や資料の表現確認を含む支援があれば、初回の負担を下げられる。

まとめ

セミナー講師は、施術とは別の技能を求められる仕事です。すぐにできるようになるわけではありません。

ただし、一度資料を作れば更新しながら再利用でき、施術者としての身体的な負担とは別の軸で育てられます。将来の選択肢を増やすという意味で、早い段階から準備する価値があります。

まずは60分の構成を一つ、紙に書き出してみてください。それが最初の資産になります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の講演資料や表現は、案件内容および最新の法令・ガイドラインに照らして個別に確認してください。
※「健康経営®」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

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